現在、人工知能(AI)はサイエンティストによる新薬発見のあり方を変えることができるか、という大きな問いが投げかけられています。
ヤンセンのサイエンティストが行った新たな研究によると、答えは「イエス」です。彼らはAIを用いて創薬プロセスを高速化する手法を発見しました。
ヤンセンが何十年にもわたって第一線で革新的な治療に取り組んでいることは、よく知られています。事実、1953年にヤンセンを創設したベルギー人医師、ポール・ヤンセン博士は、キャリア全般を通じて、生命を救う医薬品を数多く発見し、開発してきました。
通常、新薬発見のプロセスには何年も要します。サイエンティストは、有効性の試験を開始する前に膨大なデータをくまなく調べ、まずは対象疾患の治療に最も有用と考えられる化合物を特定しなければならないからです。
しかし、学術誌『Cell Chemical Biology』に発表された最近の論文では、創薬における喜ばしい進歩について述べられています。論文によると、ヤンセンのサイエンティストは、AIの新たな活用法を見いだしました。通常では人間の知能を必要とする特定のタスクをコンピューターシステムに実行させる、「機械学習」とも言われる手法を用いて、創薬プロセスを高速化させるのです。
AIは創薬にどのような変革をもたらしているか
創薬における通常の実験では、例えば肺癌など特定の疾患を発現している細胞をさまざまな化合物に触れさせ、各反応のスナップショットを顕微鏡で撮影します。
こうした1回の実験で、スナップショットは50万枚に及ぶ可能性もあります。サイエンティストは一般的に、研究対象の疾患に対して望ましい反応を生む可能性のある化合物の発見を目標として、AIを活用しながらスナップショットを分類します。
しかし、これらのスナップショットから得たデータを、ほかの疾患の実験で後に結びつける手法はありませんでした。ヤンセンの研究者はこうした知識を再利用することの重要性に気づき、欧州の一流大学の学術パートナーと協力してコンピューターアルゴリズムを開発しました。これを利用すると、サイエンティストは違うタイプの細胞が同じ化合物に対してどう反応するかを予測でき、新たな研究を開始する際の助けとなります。
ヤンセンの研究開発部門ディスカバリー・サイエンス担当サイエンティフィック・ディレクターで、論文のシニアオーサーであるHugo Ceulemansは、「もはや、毎回ゼロから始める必要はないのです」と語ります。
実際、Ceulemansと彼の研究チームは、このAIの手法により、創薬の効率はこれまでより最大で250倍向上するとしています。
「医薬品においては、多くのアンメットニーズがあります」とCeulemansは指摘します。「このアルゴリズムは情報の探索を向上させ、より優れた治療法の発見を早めることができるのです。」
この記事は Kaitlin Ahernにより執筆され、2018年5月に、www.jnj.comで最初に公開されました。