※本プレスリリースは、6月28日に米国本社にて発表したプレスリリースの抄訳版です。必ずしも日本の状況を反映したものではないことをご了承ください。本資料の正式言語は英語であり、その内容及び解釈については英語が優先します。本資料(英文)については、こちらをご参照ください。
nipocalimabは現在開発中であり、現時点でいずれの国においても承認されておりません。
nipocalimabは、全身型重症筋無力症患者さんを対象とした第III相検証
的試験において、FcRn阻害剤の中で持続的症状コントロールを示す
FcRn阻害剤で初めて、標準治療との併用により、
抗AChR抗体、抗MuSK抗体、抗LRP4抗体陽性患者群において、
24週間にわたり日常生活動作(MG-ADLa)のプラセボに対する優越性を示す
ヘルシンキ(現地時間2024年6月28日) – ジョンソン・エンド・ジョンソンは本日、全身型重症筋無力症(Generalized Myathenia Gravis:gMG)患者さんを対象とするnipocalimabの第III相Vivacity-MG3試験の結果を発表しました。本試験では、主要評価項目である24週間にわたるベースラインからのMG-ADLaスコアの改善において、nipocalimabと標準治療の併用群(以下、nipocalimab+標準治療)のプラセボと標準治療の併用群(以下、プラセボ+標準治療)に対する優越性が検証されました。これらのデータは、欧州神経学会(EAN)20241で弊社が発表する8件のアブストラクトのうちの1つとして含まれるとともに、今年後半の規制当局への申請に含まれる予定です。
イタリア・ミラノのC. Besta神経学研究所、神経免疫学・筋病理学部のCarlo Antozzi M.D.bは、次のように述べています。「このように広範な全身型重症筋無力症患者さんにおいて、6カ月間にわたるnipocalimabの持続的奏効が示されたことは、全身型重症筋無力症で一般的にみられる慢性的で予測できない病状の悪化を考慮すると重要な結果です。nipocalimabが全身型重症筋無力症患者さんの抱えるこの課題に対処できるという可能性は、私たちの励みになります」
本試験は、プラセボ対照二重盲検(比較)試験であり、抗AChR抗体、抗MuSK抗体、抗LRP4抗体陽性の幅広い全身型重症筋無力症患者さんが参加されました。こうした患者さんは、全身型重症筋無力症患者集団の約95%を占めています2。nipocalimab+標準治療では、第22週、第23週、第24週にわたり、MG-ADLaがベースラインから4.70ポイント改善し、プラセボ+標準治療で認められた3.25ポイントの改善よりも有意な改善を示しました(P=0.002)c。全身型重症筋無力症患者さんにとって、MG-ADLaの1~2点の変化は、通常に食事できることと頻繁に食べ物をのどに詰まらせることの違いや、安静時の息切れと人工呼吸器装着の違いにあたる場合もあります3。主要評価項目の達成に加えて、以下の重要な副次評価項目も満たしました。
- QMGdで測定した筋力や機能の改善は、第22週時から第24週時にわたり、nipocalimab+標準治療は、プラセボ+標準治療と比較して有意な改善を示しました(P<0.001)e。
- MG-ADLaでの奏効率(ベースラインから2ポイント以上の改善)は、第22週時、第23週時、第24週時にわたり、nipocalimab+標準治療では、プラセボ+標準治療と比較して有意に高く(P=0.021)、nipocalimabによる治療が患者さんの日常生活における全身型重症筋無力症の影響を軽減する可能性をより明確に示しています。
Nipocalimabの安全性と忍容性は、他のnipocalimabの試験の結果と一貫するものでした。有害事象、重篤な有害事象及び中止につながる有害事象の全体的な発現率は、現在のプラセボ+標準治療と同様でした。
Johnson & Johnson Innovative MedicineのVice Presidentであり、Autoantibody and Maternal Fetal Immunology Disease Area LeaderでもあるKatie Abouzahr, M.D.は、次のように述べています。「EAN 2024年次総会においてnipocalimabの新たなデータを発表できること、またそれにより、自己抗体疾患の革新的な治療法をお届けするという私たちの取り組みを強く示すことができることを大変嬉しく思います。私たちは、患者さんの大きなアンメットニーズを満たし、治療に変革をもたらすことができるよう、開発に取り組んでいます」
用語の説明:
- a. MG-ADL(Myasthenia Gravis–Activities of Daily Living[重症筋無力症-日常生活動作])は、日常生活動作に影響を及ぼす症状を患者さんの報告に基づいて迅速に臨床評価する指標です。合計スコアは0~24で、スコアが高いほど症状の重症度が高いことを示します。
- b. Antozzi博士は、ジョンソン・エンド・ジョンソンのコンサルタントを務めていますが、メディア関連の活動に関する報酬は受け取っていません。
- c. nipocalimab+標準治療における平均変化量は、-4.70(標準誤差0.329)、現在プラセボ+標準治療における平均変化量は、-3.25(標準誤差0.335)で、最小二乗平均値の差は-1.45 [0.470]; P=0.002でした。
- d. QMG(Quantitative Myasthenia Gravis[定量重症筋無力症])は、重症筋無力症の重症度を測る臨床医による13項目の評価です。QMGスコアの合計は0~39で、スコアが高いほど重症度が高いことを示します。
- e. 第22週時、第23週時、第24週時にわたる、ベースラインからの変化量の平均値は、nipocalimab投与群で-4.86(標準誤差 0.504)、現在のプラセボ+標準治療に無作為に割り付けられた患者群の平均値は-2.05(標準誤差 0.499)で、最小二乗平均値の差は-2.81; P<0.001でした。
全身型重症筋無力症(gMG)について
重症筋無力症(MG)は、自己抗体が神経筋接合部のタンパク質を標的として、神経筋シグナル伝達を障害し、筋収縮を障害または妨げる自己抗体疾患です4。MGでは、免疫系が抗受容体抗体(最も一般的なものは、抗アセチルコリン受容体[AChR]抗体または抗筋特異的キナーゼ[MuSK]抗体)を産生し、誤って筋受容体を攻撃します。それにより、これらの筋受容体が遮断または破壊され、神経から筋肉に伝達されるシグナルが妨げられます5。MGは世界で70万人の患者さんがいると推定されています。初発症状は眼症状であることが多いものの、53%以上6,7が全身型(gMG)です。全身型重症筋無力症の症状としては、変動を伴う骨格筋の筋力低下で、四肢脱力、眼瞼下垂、複視、咀嚼困難、嚥下困難、発話困難、呼吸困難などが挙げられます8,9。全身型重症筋無力症は既存の標準治療法で対処できる場合もありますが、既存の治療法では十分な効果が得られない、もしくは現治療に対して忍容性がない患者さんのために、新たな治療薬の開発が必要とされています。
第III相Vivacity-MG3試験について
第III相Vivacity-MG3試験は、アンメットニーズの高いこの予測できない慢性疾患において、持続的な有効性と安全性を評価するためにデザインされました。現在の標準治療で十分な効果が得られない(MG-ADL ≥6)、抗体陽性または抗体陰性のgMG成人患者さんを対象とし、199名(うち153名が抗体陽性者)が、24週間の二重盲検、プラセボ対照試験に参加しました。患者さんは、現在の標準治療に加えてnipocalimabの静脈内投与(30 mg/kg負荷投与後、隔週で15 mg/kg)または現在の標準治療に加えてプラセボの投与に、1対1の割合で無作為に割り付けられました。ベースライン時の人口統計学的特性は、治療群間で均衡していました(nipocalimab群77名、プラセボ群76名)。主要評価項目は、抗体陽性患者さんでの、第22週、第23週、第24週にわたるベースラインからのMG-ADLaスコアの平均変化量でした。重要な副次評価項目としては、QMGcスコアの変化量が含まれました。長期的な安全性と有効性は、現在進行中の非盲検継続試験(OLE)でさらに評価されています10。
nipocalimabについて
nipocalimabは現在開発中のモノクローナル抗体であり、高い親和性で結合してFcRnを阻害し、循環免疫グロブリンG(IgG)抗体の濃度を下げつつ、広範囲な免疫抑制を引き起こさずに免疫機能も維持するよう設計されています。その対象には、3つの重要な自己抗体疾患である「希少な自己抗体疾患」、母体の同種抗体が介在する「母体胎児疾患」および「比較的罹患率の高いリウマチ性疾患」において複数の疾患の根本的な原因となっている自己抗体や同種抗体が含まれます10,11,12,13,14,15,16,17,18。
また、胎盤でIgGとFcRnの結合を阻害することで、母体の同種抗体が胎盤を介して胎児に移行することを防げるとも考えられています19,20。
米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)は、nipocalimabに対して以下の重要な指定を行っています。
- 2019年7月に胎児新生児溶血性疾患(HDFN)および温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)、2021年12月に全身型重症筋無力症(gMG)、2024年3月に胎児・新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)に対するFast Track指定を受けました
- 2019年12月にwAIHA、2020年6月にHDFN、2021年2月にgMG、2021年10月に慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、2023年12月にFNAITに対するオーファンドラッグ指定を受けました
- 2024年2月にHDFNに対するブレークスルーセラピー指定を受けました
- 欧州医薬品庁より2019年10月にHDFNに対するオーファンドラッグ指定を受けました
Johnson & Johnson について
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、健康こそすべてだと考えています。ヘルスケアイノベーションにおける私たちの強みが、複雑な病を予防、治療、治癒し、治療をよりスマート化した、低侵襲なものに進化させ、一人ひとりの患者さんに合ったソリューションを提供することができる世界を築く力になります。 Innovative MedicineとMedTechにおける専門性を生かし、将来の飛躍的な進化に向けてヘルスケアソリューションの幅広い領域でイノベーションを推し進め、人々の健康に大きなインパクトを与えていきます。
日本におけるJohnson & Johnson Innovative Medicine について
Johnson & Johnson Innovative Medicine は、米J&Jグループにおける医療用医薬品事業の名称です。日本では、1978年の設立以来、これまでヤンセンファーマ株式会社として、患者さんの治療に貢献する多くの医薬品をお届けしてきました。私たちは、アンメットニーズに基づく開発戦略のもと、注力疾患領域―がん、免疫疾患、精神・神経疾患、心血管疾患、肺高血圧症、および網膜疾患領域における学術および情報提供活動を強化しながら、私たちの薬剤を必要とする全ての患者さんが適切なタイミングでベストな治療を選択するための活動を続けています。新しいJohnson & Johnson Innovative Medicineブランドとともに、私たちは、今後も医療の未来を切り拓き、日本の患者さんに革新的な医薬品をお届けしていきます。
Johnson & Johnson Innovative Medicineに関する詳しい情報はwww.janssen.com/japan/をご覧ください。また、www.facebook.com/JanssenJapan/をフォローしてください。
【本件に関するお問合せ先】
ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション&パブリックアフェアーズ部
E-mail: [email protected]
参考文献
- Antozzi, C et al., Efficacy and Safety of Nipocalimab in patients with Generalized Myasthenia Gravis- Top Line Results from the Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized Phase 3 Vivacity-MG3 study. 2024 European Academy of Neurology Congress. June 2024.
- Meriggioli MN, Sanders DB. Muscle autoantibodies in myasthenia gravis: beyond diagnosis? Expert Rev Clin Immunol 2012; 8: 427–38
- Hartford CA, Sherman SA, Karantzoulis S, Guillemin I, Phinney MG, Kelly KL, Negron KE, Raja SM, Rofail D. Experience of Daily Life with Generalized Myasthenia Gravis: A Qualitative Investigation and Assessment of Instrument Content Validity. Neurol Ther. 2023 Dec;12(6):2079-2099. doi: 10.1007/s40120-023-00544-y. Epub 2023 Sep 25. PMID: 37747661; PMCID: PMC10630275.
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