エルダフィチニブ、FGFR3遺伝子変異又は融合遺伝子を有する
がん薬物療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌に係る製造販売承認を申請
本申請は、第III相THOR試験コホート1の結果に基づく
エルダフィチニブ群と化学療法群との比較で、死亡リスクの36%低下が示される
ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:關口修平、以下「ヤンセン」)は20日、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるエルダフィチニブについて、「成人のFGFR3遺伝子変異又は融合遺伝子を有する、がん薬物療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」に対する治療薬として、製造販売承認を申請しました。
今回の申請は、日本及び海外で実施された第III相THOR試験(NCT03390504)のコホート1の結果に基づくものです1。本試験のコホート1では、成人のFGFR3遺伝子変異又はFGFR3/2融合遺伝子を有する、がん薬物療法(PD-1もしくはPD-L1による治療)後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん患者さんを対象に、エルダフィチニブの有効性及び安全性を評価しました1。
本試験では、主要評価項目(全生存期間:OS)を達成しており、予め規定された中間解析データカットオフ時点で、OS中央値は化学療法群が8カ月であったのに対し、エルダフィチニブ群は1年以上でした2。また、エルダフィチニブ群は化学療法群に比べ、死亡リスクが36%低下していることも示されました2。この中間解析結果は、エルダフィチニブによる治療が化学療法よりも優れているという事前に定義された基準を満たしたため、独立データ安全性モニタリング委員会は試験を中止し、化学療法に無作為に割り付けられた患者さんにエルダフィチニブへのクロスオーバーの機会を提供するよう勧告しました2。本試験で観察されたエルダフィチニブの安全性プロファイルは、これまでに報告された転移性尿路上皮がんにおけるエルダフィチニブの安全性プロファイルと一貫していました2,3。
ヤンセンの取締役 研究開発本部 本部長のアマナス・シャーマは次のように述べています。「今回の申請及びエルダフィチニブに関し現在実施している試験は、転移性尿路上皮がんのような、患者さんに大きな影響を与える疾患をはじめ、アンメットニーズの高い領域で必要とされる標的治療薬を提供するという私たちのコミットメントを強化するものです。エルダフィチニブはFGFR遺伝子変異を有する進行性の尿路上皮がんにおいて有望な結果を示しており、今回の申請は患者さんの予後改善に向けた重要な一歩となります」
THOR試験について
THOR試験(NCT03390504)は、転移性または切除不能な成人の尿路上皮がんで、標的FGFR遺伝子変異を有し、前治療である一次治療もしくは二次治療後に病勢進行が認められた患者さんを対象に、エルダフィチニブの有効性と安全性を評価する第III相、非盲検、無作為化、多施設共同試験です1。本試験は、抗PD-(L)1製剤を含む少なくとも1ライン以上の治療後に病勢進行した患者さんに対してエルダフィチニブもしくは標準化学療法(治験責任医師がドセタキセル又はVinflunine*を選択)を投与し評価するコホート1と、抗PD-(L)1製剤を含まない1ライン以上の治療後に病勢進行した患者さんに対してエルダフィチニブもしくはペムブロリズマブを投与し評価するコホート2から構成されています1。主要評価項目はOSであり、副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、患者報告アウトカム、安全性、薬物動態(PK)です1。
コホート1の結果は、今年開催された2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で2、コホート1の更新された結果及びコホート2の結果は、2023年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会で発表されました4。
*Vinflunineは、日本国内において未承認です。
エルダフィチニブについて
エルダフィチニブは、1日1回経口投与のFGFRキナーゼ阻害剤であり5、感受性の高いFGFR3又はFGFR2遺伝子変異を有し、プラチナ製剤を含む化学療法による治療の実施中又は実施後(プラチナ製剤を含む化学療法の術前又は術後12ヵ月以内を含む)に病勢進行した局所進行性又は転移性尿路上皮がん成人患者さんの治療薬として2019年に米国で迅速承認を取得しています。
そして2023年8月、米国食品医薬品局に対し、抗PD-(L)1治療後のFGFR3遺伝子変異を有する局所進行性又は転移性尿路上皮がんに対する医薬品承認事項変更申請を行い、9月には欧州医薬品庁に対し、抗PD-(L)1治療後のFGFR3遺伝子変異を有する局所進行性の切除不能又は転移性尿路上皮がんに対する製造販売承認申請を行いました。
なお、エルダフィチニブは第III相THOR試験に加え、第II相THOR-2/BLC2003(NCT04172675)試験において、BCG療法を行った高リスクの筋層非浸潤性膀胱がんを再発した患者さんを対象に、エルダフィチニブと治験責任医師が選択した膀胱内注入療法を比較する試験も実施されています6。
他にもFGFR1-4遺伝子変異を有する進行性固形がん患者さんを対象とした、がん種や部位に関係なく(腫瘍横断的)、エルダフィチニブの安全性と有効性を評価する第II相RAGNAR試験(NCT04083976)7、選択的FGFR遺伝子変異を有する筋層非浸潤性または筋層浸潤性膀胱がん患者さんを対象に、全身性の副作用を軽減しつつ、局所膀胱がんを治療するように設計された膀胱内薬物送達システム(TAR-210)を用いてエルダフィチニブを膀胱内に注入する第I相試験(NCT05567185)8が進行中です。
なお2008年、Janssen Pharmaceutica NVはAstex Pharmaceuticalsとエルダフィチニブの開発および販売に関し、全世界での独占的ライセンス契約を締結しています9。
尿路上皮がんについて
尿路上皮がんは、尿路(腎盂~尿道)に発生するがんであり、膀胱に最も多く認められます。病理学的には、膀胱がんの90%以上が尿路上皮癌(移行上皮癌)であり10、膀胱の最も内側にある内膜から発生します11。日本国内における膀胱がんの患者数は、2019年で約23,000人、2020年の死亡者数は約9,000人です12。膀胱がん全体の5年相対生存率(2009~2011年)は73.3%ですが、ステージIVとなると20%以下まで落ち12、予後不良ながんです。
転移性の尿路上皮がんと診断された患者さんのうち、5人に1人は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の遺伝子変異を有しています13。FGFRは受容体型チロシンキナーゼの一種で、さまざまなタイプのがんにおいて、遺伝子変異によって活性化され、これらの変異により腫瘍細胞の増殖と生存を増大させる可能性があります14。FGFRは、組織修復、炎症反応、代謝など、いくつかの生物学的プロセスにおいて重要な役割を担っています15。FGFRを制御する遺伝子における融合や変異(FGFR1-4の変化として知られている)は、腫瘍細胞の増殖や生存を増大させることにより、特定のがんの発症や進行につながる可能性があります16。FGFRが関与する腫瘍をはじめとする進行性尿路上皮がん患者さんの予後は不良であり、治療におけるアンメットニーズは依然として高い状況です13,17。
ヤンセンについて
ヤンセンが目指すのは、病が過去のものになる未来をつくることです。
治療が困難な病を過去のものとするために、科学の力で病に打ち克ち、画期的な発想力で多くの人々に薬を届け、真心を持って癒し、希望をお届けします。私たちはがん、免疫疾患、精神・神経疾患、心血管疾患、肺高血圧症、網膜疾患の分野で貢献ができると考え、注力しています。
ヤンセンに関する詳しい情報はwww.janssen.com/japan/をご覧ください。
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ヤンセンファーマ株式会社は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門であるヤンセンファーマグループの一員です。
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ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション&パブリックアフェアーズ部
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参考文献
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