日本の実臨床において、入院に関するSG-LAI*1の有用性を示す
ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:關口修平、以下「ヤンセン」)は、被雇用者を含む統合失調症患者さんの入院における第2世代抗精神病薬の持効性注射製剤(Second Generation antipsychotics Long-Acting Injection:SG-LAI)の有用性について、レセプトデータを用いて評価した結果を発表しました。研究の結果、SG-LAI投与開始後の観察期間における入院率は、ベースライン(SG-LAI投与開始1年前)と比較して有意に低下し、入院期間の短縮も示唆されました。本研究の結果は、2023年6月7日付けでAsian Journal of Psychiatry に掲載されました1。
これまで、本邦において実臨床での第2世代抗精神病薬の持効性注射製剤(SG-LAI)の入院に関するデータは限られていました。
本研究について1
本研究は、JMDCを用いた後ろ向き追跡研究です。第2世代抗精神病薬(リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール)を成分として含む持効性注射剤を投与された統合失調症患者さんのレセプトデータのうち、条件に該当するデータを取得できた146例について解析しました。
SG-LAI投与開始日を基準日として、基準日の前1年間のベースライン期間と投与後の観察期間中における全ての理由による入院、精神科への入院、統合失調症症状の悪化による入院期間を調査しました。
その結果、ベースライン期間中に入院期間が0~7日であった67例のうち、観察期間中に8日以上の入院をしたのは8例(11.9%)でした。一方、ベースライン期間中に8日以上入院した79例のうち41例(51.9%)は、観察期間中に入院した期間が0~7日に短縮していました。入院期間の短縮におけるこの差は、統計学的に有意なものでした(P=0.00)。
また被雇用者のサブグループ解析では、ベースライン期間中に入院期間が0~7日であった29例のうち、観察期間中に8日以上の入院をしたのは3例(10.3%)でした。一方、ベースライン期間中に8日以上入院した26例のうち14例(53.8%)は、観察期間中に入院した期間が0~7日に短縮していました。入院期間の短縮におけるこの差は、統計学的に有意なものでした(P=0.02)。
なお、本研究データはレセプトデータを元にした解析であり、7日以下の短期入院の理由については不明です。また、患者さんの臨床評価は含まれておらず、治療薬の変更及び投与理由は明らかではありません。また本研究の分析集団は、日本の統合失調症患者さん全体を代表するものではない可能性があります。
JMDCについて
JMDC Claims Databaseは、2005年より複数の健康保険組合より寄せられたレセプト(入院、外来、調剤)および健診データを匿名化したデータベースで、保険者データベース加入者数は約1,600万人です2。
統合失調症について
統合失調症は思春期から成人期にかけて発症する疾患で、患者数は日本国内で約79万人程度と推計されています3。幻覚、妄想などの陽性症状、感情の平板化、意欲低下などの陰性症状、注意、記憶の障害などの認知機能障害を主徴とします。統合失調症の治療において薬物治療は重要な要素のひとつであり、維持期における再発・再燃を予防するために長期的な治療も必要とされています4,5。しかし、多くの患者さんが治療中断による再発やそれに伴う再入院を繰り返しています6。これらの再発・再燃の問題を解決し、治療を成功させるためには、服薬アドヒアランスの向上が重要な課題とされています7。
持効性抗精神病薬注射製剤(LAI AP)について
持効性抗精神病薬注射製剤とは、筋肉内に注射することで、その効果が2~12週間続くよう設計された抗精神病薬製剤のことです。筋肉に注射された薬剤は体内に長くとどまり、持続的に血液に取り込まれることから、長く効果を発揮します。現在、日本国内において承認されているLAI APには3つの成分、5つの製品があり、そのうち、リスペリドン(リスパダールコンスタ®筋注用)、パリペリドンパルミチン酸エステル(ゼプリオンTRI®水懸筋注シリンジ、ゼプリオン®水懸筋注シリンジ)、アリピプラゾール水和物の3種類が第2世代に位置づけられています。
*1:第2世代抗精神病薬持効性注射剤。本研究で解析対象としたSG-LAIは、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール
ヤンセンについて
ヤンセンが目指すのは、病が過去のものになる未来をつくることです。
治療が困難な病を過去のものとするために、科学の力で病に打ち克ち、画期的な発想力で多くの人々に薬を届け、真心を持って癒し、希望をお届けします。私たちは循環器疾患、代謝・網膜疾患、免疫疾患、感染症・ワクチン、精神・神経疾患、がん、肺高血圧症の分野で貢献ができると考え、注力しています。
ヤンセンに関する詳しい情報はwww.janssen.com/japan/をご覧ください。
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ヤンセンファーマ株式会社は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門であるヤンセンファーマグループの一員です。
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参考文献
- Clinical benefit of second-generation long-acting injectable antipsychotics in preventing re-hospitalization in patients with schizophrenia: A real-world study in Japan, Mami Kasahara-Kiritani, Yosuke Saga, Akihide Wakamatsu, David Bin-Chia Wu, I-Ching Tsai.
Asian J Psychiatr. 2023 Aug;86:103671. doi: 10.1016/j.ajp.2023.103671. Epub 2023 Jun 7 - https://www.phm-jmdc.com/ 2023年9月10日確認
- 厚生労働省:平成29年(2017年)患者調査の概況, P15より
- American Psychiatric Association (APA). Practice guidelines for the treatment of patients with schizophrenia, Second Edition. American Psychiatric Association. 2010.
- Robinson D, et al. Predictors of relapse following response from a first episode of schizophrenia or schizoaffective disorder. Arch Gen Psychiatry. 1999;56(3):241-7.
- 稲垣中, et al. 精神分裂病維持療法における非定型抗精神病薬とデポ剤の役割. 臨床精神薬理. 2001;4(3):361-7.
- Velligan DI, et al. The expert consensus guideline series: adherence problems in patients with serious and persistent mental illness. J Clin Psychiatry. 2009;70 Suppl 4:1-46.