米ジョンソン・エンド・ジョンソン傘下の医薬品製造会社で、欧州に拠点を持つヤンセン・シラグとオーソ・バイオテックの2社は、去る9月8日、多発性骨髄腫(Multiple Myeloma,以下MM)の画期的な治療薬、ベルケイド® (VELCADE®、一般名ボルテゾミブ)が、新薬の開発において最高の栄誉であり、薬学的な革新に対して授与される2006年度『国際プリ・ガリアン賞(International Prix Galien prizes)』を受賞したと発表しました。
これは、ベルケイド®が腫瘍に対して革新的な治療アプローチであり、MM治療に多大な進歩をもたらした点を同賞選考委員会が高く評価したことによるものです。ヤンセン・シラグにとって栄えある同賞の受賞は1996年に統合失調症治療薬のリスパダール®(同リスペリドン)以来、10年ぶり2度目のこととなります。
国際プリ・ガリアン賞は、患者さんに大きなベネフィットをもたらすとともに、治療を大きく進歩させる革新的な治療薬を評価することを目的とした賞であり、プリ・ガリアン国内賞※1 をすでに受賞した薬剤の中から選考されます。ベルケイド®は、今回の国際賞受賞に先立ち、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、スイスの5ヶ国において過去にプリ・ガリアン国内賞を受賞、今回、他の候補薬剤、14品目の中からの国際賞選出となりました。
MMに対する治療薬としては10年以上にわたり新薬が発売されていない中で、ベルケイド®はがん患者への使用が承認されている唯一のプロテアソーム阻害剤であり、現在世界75カ国において使用が承認されている画期的な治療薬です。
アーロン・チカノーバー (Aaron Ciechanover,イスラエル)、アブラム・ハーシュコ(Avram Hershko,イスラエル)およびアーウィン・ローズ(Irwin Rose,米国)の3名の科学者は、不要なタンパク質を分解する主要メカニズムであるユビキチン - プロテアソーム経路を構成する酵素複合体を発見しましたが※2 、この功績を称えて、同3名の科学者に対して2004年度ノーベル化学賞が授与されています。同酵素複合体の発見がベルケイド®の開発に大きく寄与したことは広く知られております。
今回の国際プリ・ガリアン賞受賞にあたり、スペインのサラマンカ大学病院のへスース・サン・ミゲル(Jesus San Miguel)医学部教授は次のようにコメントしています。
「ベルケイド®は、再発し、以前では有効な治療法がなかった当院のMM患者さんに対して、症状の進行を抑える可能性があり、さらには進行を遅らせる可能性をもたらしました。ベルケイド®の効果は、より早い時期のMM治療においても効果がある可能性が高く、他の抗がん剤との併用療法や他の治療法との組み合わせにおいて効果が増強されることがわかり始めています。ベルケイド®による治療への革新的アプローチは、稀な難病であるMMはもとより、潜在的には他のがん患者にとっても大いなる福音です。」
ベルケイド® は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの創薬研究機関であるJ&JPRDと米ミレニアム・ファーマシューティカルズが共同開発している薬剤です。ベルケイド®の販売は、ミレニアムが米国、オーソ・バイオテックおよびヤンセン・シラグが欧州をはじめとした他の国々を担当しています。日本ではヤンセンファーマが販売を担当する予定です。
(ご参考)
日本での開発状況について:
本邦におけるボルテゾミブ の開発はヤンセンファーマ株式会社(東京都千代田区、社長:関口 康)が進めています。本剤は2003年12月に希少疾病医薬品に認定され、2005年10月厚生労働省に本薬剤を再発又は難治性多発性骨髄腫の適応症にて承認申請をいたしました。
以上
※1 ベルギー,カナダ,ドイツ,アメリカ,イギリス等10カ国以上においてプリガリアン賞は選出されている
※2 San Miguel J, Bladé J, Boccadoro M et al. A practical update on the use of bortezomib in the management of multiple myeloma. Oncologist 2006; 11(1): 51–61. management of multiple myeloma. Oncologist 2006; 11(1): 51–61.