ヤンセンファーマ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:クリス・フウリガン、以下ヤンセン)は第5回アジアクローン病・大腸炎学会年次総会 (AOCC2017、6月15-17日、韓国ソウル) で新たな調査結果を発表しました。この調査は、日本人の炎症性腸疾患(IBD)患者さんの意思決定における情報共有が治療満足度に与える影響を明らかにするものです。[1]
患者さんの92%が意思決定における情報共有をしたいという意向を明らかにし、調査の結果、患者さんと主治医の情報共有の程度が高い場合、特に潰瘍性大腸炎において治療満足度が約16倍高まることが分かりました。また、生物学的製剤の投与を受けている患者さんの方が、治療満足度が高くなりました。1
治療満足度は、コンプライアンスと臨床アウトカムに好影響を与えることが示されています。[2] この最新の調査結果では、治療の意思決定において医師が患者さんの意向を踏まえて話し合うことの重要性、ならびに生物学的製剤の患者満足度の向上への貢献が示唆されました。
国際的な調査を通じて、IBD患者さんの治療に関連する行動は、治療の受容性および主治医との関係に影響されることも分かりました。[3] 他方で、国内のクローン病患者さんを対象とする調査では、治療への高い不満、および自分の感情を医師に話すことへの抵抗が認められました。[4]
ヤンセンの代表取締役社長クリス・フウリガンは、こう述べています。「IBD患者さんと医師の会話を促すため、ヤンセンは『IBDサプリ』というスマートフォンアプリを開発しました。このアプリを使って、患者さんは症状を記録し担当医と共有することができます。これは、画期的な生物学的製剤に加え、患者さんによる治療体験の支援を通じて、国内のIBD患者さんのQOL向上につとめるヤンセンの取り組みのひとつです」
炎症性腸疾患 (IBD) とは腸の慢性的な炎症を伴う疾患であり、主にクローン病と潰瘍性大腸炎のことを指します。[5] IBDの国内の患者数は約20万人で [6]、この慢性的な消耗性疾患の罹患率は今後急増が見込まれます。[7] クローン病と潰瘍性大腸炎はどちらも重度の下痢、疼痛、倦怠感、体重減少を伴うことがあり、5 命にかかわる合併症を招くこともあります。[8]
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調査について1
IBD治療中の日本人患者1,035人を対象とする全国調査を行い、医師と患者さんの治療管理に対する意思決定における情報共有の程度が高い場合、患者の満足度が高まるかどうかを検討しました。評価法として、意思決定における情報共有に対する患者さんの意向と、意思決定への患者さんの実際の関与度合がどの程度一致しているか調べました。単変量・多変量ロジスティック回帰を用いて、治療満足度に関連する要因を評価しました。大部分の患者さんが、意思決定における情報を共有したいという強い意向を示しました。クローン病患者さんは、潰瘍性大腸炎患者さんと比べて意思決定における情報の共有を望む意向が強く、治療の意思決定にも積極的に参加しています。クローン病患者さんに占める、治療に「非常に満足している」患者さんの割合は、潰瘍性大腸炎患者さんの同じ割合を上回っています。また、特に潰瘍性大腸炎患者さんでは、医師と患者さんの意向の合致度が高い場合、合致度が低い場合[オッズ比15.89 (95% 信頼区間: 7.85 – 32.16)]と比べて治療満足度がおよそ16倍[オッズ比 15.76 (95% 信頼区間: 8.00 – 31.05)]高まりました。そして、特に潰瘍性大腸炎患者さん [オッズ比 1.58 (95% 信頼区間: 1.02 – 2.63)]を中心に、患者さんの大半[オッズ比 1.72 (95% 信頼区間: 1.22 – 2.41)]において、生物学的製剤の投与を受けている方が治療満足度が高くなりました。
炎症性腸疾患について
炎症性腸疾患 (IBD) は腸の慢性的な炎症を伴い、主にクローン病と潰瘍性大腸炎のことを指します。5 IBDの国内の患者数は約20万人で6 、この慢性的な消耗性疾患の罹患率は今後急増が見込まれます。 7
クローン病は炎症性腸疾患のひとつで、日本では約40,000人の患者がいるとされます。6 男女どちらも等しく罹患し年齢を問わず発症するものの、15~35歳の青少年に好発する疾患です。[9] クローン病の症状は様々ですが、しばしば腹痛や腹部圧痛、頻回な下痢、直腸出血、体重減少および発熱が生じます。現時点で完治させる方法はありません。[10]
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患のひとつで、日本では約160,000人の患者がいるとされます。6 現時点で完治させる方法はなく、原因もいまだ不明です。[11] 30代半ばで潰瘍性大腸炎と診断される人が多く、患者の30%はいずれかの時点で手術が必要になります。11 血便、重度の下痢、頻繁な腹痛などの症状がみられ、11 大腸粘膜に潰瘍やびらんができ、出血および膿や粘膜の排出が生じます。 食欲低下、大幅な体重減少、倦怠感をもたらすこともあります。11
アプリ『IBDサプリ』について
ヤンセンは、患者さんが症状を記録し医師と共有できるアプリ『IBDサプリ』を発表しました。さらにこのアプリは、記録をつける時間や次回通院日をリマインドしてくれるほか、チェックリスト機能を使って、通院時に先生に聞きたいことを登録できます。アプリは、グーグルプレイまたはアップルストアからダウンロードできます。
参考文献:
[1] 松岡克善ら『日本人IBD患者の意思決定の共有と治療満足度』: AOCC 2017(6月15~17日、ソウル)
[2] O・リンドヘイムら『クライアントの意向が治療満足度、終了および臨床アウトカムに影響する―メタアナリシス』Clin Psychol Rev. 2014年8月; 34(6): 506–517.
[3] F・ベルメジョら『炎症性腸疾患患者の治療遵守を改善する要因』Journal of Crohn's and Colitis (2010) 4, 422–426.
[4] ヤンセン、2017年、社内資料
[5] 米国クローン病・大腸炎財団『クローン病および大腸炎とは何か?』 掲載先: http://www.crohnscolitisfoundation.org/what-are-crohns-and-colitis/ 最終アクセス: 2017年5月16日
[6] 難病情報センター: http://www.nanbyou.or.jp/entry/81. 最終アクセス:2017年3月17日
[7] 朝倉敬子ら『日本における潰瘍性大腸炎とクローン病の有病率』J Gastroenterol 2009年;44:659-665.
[8] 米国クローン病・大腸炎財団『腸合併症』掲載先: http://www.crohnscolitisfoundation.org/resources/intestinal-complications.html 最終アクセス: 2017年5月19日
[9] 米国クローン病・大腸炎財団『クローン病とは何か?』掲載先: http://www.ccfa.org/what-are-crohns-and-colitis/what-is-crohns-disease. 最終アクセス:2017年3月17日
[10] 米国クローン病・大腸炎財団『クローン病の治療選択肢』掲載先: http://www.ccfa.org/iwhat-are-crohns-and-colitis/what-is-crohns-disease/crohns-treatment-options.html 最終アクセス:2017年3月13日
[11]米国クローン病・大腸炎財団『潰瘍性大腸炎とは何か?治療選択肢』掲載先: http://www.crohnscolitisfoundation.org/what-are-crohns-and-colitis/what-is-ulcerative-colitis/colitis-treatment-options.html. 最終アクセス:2017年3月9日