サンフランシスコ―2016年6月8日―ライフサイエンスのイノベーションと疾患の予防・抑制・治療のための分野を超えた統合的なソリューション開発の支援の一環として、ジョンソン・エンド・ジョンソンは本日、2016年国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞の受賞者を発表しました。受賞したのは、オートファジー(自食作用)の分子基盤を世界で初めて発見した、細胞生物学者の大隅良典博士(東京工業大学)です。
大隅博士は本日、サンフランシスコで開催されている2016年BIOインターナショナル・コンベンションのイベントで表彰を受けました。大隅博士の受賞スピーチはこちらをご覧ください。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのチーフ・サイエンティフィック・オフィサーであるポール・ストッフルズ博士は、次のように述べています。「大隅博士はその卓越した好奇心を原動力に、オートファジーの分子レベルでのメカニズム、およびその制御を世界で初めて発見し、すべての生体細胞の最も基本的な機能の1つを解明するにいたりました。この大隅博士の発見により、多くの疾病の理解、予防、そして治療が進むことが期待されています。大隅博士の研究は、ポール・ヤンセン博士が日々研究所にもたらした革新的な精神を連想させ、その貢献を称賛できることを大変光栄に思います。」
オートファジーは、すべての生体の細胞で起こる現象であり、細胞機能の維持や修復、飢餓状態下でエネルギー生産をするための機能です。大隅博士はこのメカニズムを酵母細胞を用いて最初に発見し、その後、この現象が植物から人類に至るあらゆる生命体で認められる細胞の最も基本的な機能であることを確認しました。その後のオートファジー機能の破綻に関する研究は、癌やアルツハイマー病など、多くの健康障害の分子機序の理解を促進させました。
国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞の独立選考委員会の委員長であり、テキサス大学サウスウェスタン校分子遺伝学ポール・J・トーマス教授兼分子遺伝学ジョンソンセンターディレクターであるマイケル・ブラウン博士は、次のように述べています。「大隅博士の発見は、生物学および医学分野の最も刺激的かつ広範囲に渡る分野の1つの扉を開きました。オートファジーは酵母から人類に至るすべての生命体にとって、飢餓状態のときに生存するためには欠かせない機能です。大隅博士と彼の共同研究者達が生化学と遺伝学の素晴らしい組み合わせを用いて酵母における複雑なその経路を解明するまでは、その研究は電子顕微鏡によってのみ観察され、そのメカニズムは誰も解明できずにいました。高等生物におけるオートファジーは、特定の細菌の感染、神経変性、癌など、様々な病態に関する多くの機能と関連があることがその後の研究で示唆されています。大隅博士の発見は、生物科学および医学分野に重大な影響をもたらしました。」
大隅博士は、東京工業大学科学技術創成研究院の栄誉教授で、総合研究大学院大学、基礎生物学研究所の名誉教授でもあります。また、過去には東京大学の助教授、基礎生物学研究所の教授も歴任しました。大隅博士は東京大学で学士号と博士号を取得後、ニューヨークにあるロックフェラー大学で博士研究員を務めました。大隅博士はこれまでも、藤原賞、日本学士院賞、朝日賞、京都賞生命科学部門、慶應医学賞、国際生物学賞、ガードナー国際賞、ローゼンスティール賞、ワイリー生物医学賞など、数々の賞を受賞しています。
大隅博士は次のように述べています。「私の研究に多くの方が関心を抱いて下さり、また私の研究が人々の健康に影響を及ぼすような進歩につながる可能性があるということを、大変光栄に思います。国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞の受賞者に選んでいただいたこと、そしてこれまでの受賞者の仲間入りをすることができたことを非常に誇りに思います。」
国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞の受賞者は、世界的に著名な科学者たちで構成される独立選考委員会で選ばれます。同賞は、9月に米国とベルギーで行われる授賞式典で、賞金20万ドルとともに大隅博士に授与されます。
国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞について
ポール・ヤンセン博士は20世紀で最も才能ある情熱的な研究者の1人で、80以上の医薬品の発見と開発に貢献しました。これを通じて数百万もの命が救われました。ヤンセン博士が発見した医薬品のうち、4つは現在も世界保健機関(WHO)の必須医薬品リストに収載されています。国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞は、ジョンソン・エンド・ジョンソンがポール・ヤンセン博士の栄誉をたたえるために、2004年に創設しました。これまでの受賞者には以下の方々が含まれます。
• 2015年:バート・フォーゲルシュタイン博士
• 2014年:エマニュエル・シャルパンティエ博士およびジェニファー・ダウドナ博士
• 2013年:デヴィッド・ジュリアス博士
• 2012年:ヴィクター・アンブロス博士およびゲイリー・ラブカン博士
• 2011年:ナポレオン・フェラーラ博士
• 2010年:アンソニー・S・ファウシ博士およびエリック・デ・クレルク博士
• 2009年:アクセル・ウルリッヒ博士
• 2008年:ラヴィンダー・メイニー博士およびマーク・フェルドマン博士
• 2006年:クレイグ・メロー博士(ノーベル賞受賞者)
詳細は、www.pauljanssenaward.com(英語サイト)をご覧ください。
選考委員会について
国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞の独立選考委員会は、科学栄誉賞の受賞者、ノーベル賞受賞者、全米科学アカデミーのメンバー、そして国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞の過去の受賞者など、世界の第一線級の科学者で構成されています。
2016年の選考委員会のメンバーには、以下の方々が含まれます。
• マイケル・ブラウン博士(委員長):テキサス大学サウスウェスタン校分子遺伝学ポール・J・トーマス教授 兼 分子遺伝学ジョンソンセンターディレクター
• ブルース・ボイトラー博士:テキサス大学サウスウエスタン医療センター指導教授 兼 宿主防衛遺伝学センターディレクター
• エリザベス・ブラックバーン博士:サルク生物学研究所所長
• ハンス・クレーバース博士:ヒューブレヒト・インスティテュート(オランダ)分子遺伝学教授
• ジェニファー・ダウドナ博士:カリフォルニア大学バークレー校細胞分子生物学・化学教授、李嘉誠生物医学保健科学センター総長、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員
• デヴィッド・ジュリアス博士:カリフォルニア大学サンフランシスコ校生理学部教授兼学長
• レベッカ・リチャーズ=コータム博士: マルコム・ギリス大学教授、ハワード・ヒューズ医療研究所(HHMI)教授、ライス360°インスティテュート・フォー・グローバル・ヘルス ディレクター
• トーマス・スードフ博士:スタンフォード大学医学部エイブラム・ゴールドシュタイン教授 兼 分子細胞生理学教授
ヤンセンについて
ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門であるヤンセンは、病気のない世界を実現するために日々努力しています。今までにない、より良い方法で疾患を予防・撲滅・治療・治癒し、人々の命に貢献することが私たちの望みです。そして、常に患者さんのことを考え、最も有望なサイエンスを追及しています。私たちヤンセンは、人々の希望と命を明日につなぐため、世界中とコラボレーションしています。さらに詳しい情報はwww.janssen.com/japanをご覧ください。